心理療法に立ち合い、セラピストとクライアントの間に介在するセラピー犬には、どのような資質が必要となるのでしょう。
まずは、心理療法に介在する犬は、いわゆる「癒し」を与えることを主な目的としていないという特質があります。多くのアニマルセラピー(主に動物介在活動)は、動物との触れ合いによってもたらされる癒しの効果を主効果として提供するものです。それに対して、心理療法に介在するセラピー犬は、快不快を安全かつ適切な形で表現できることが重要な資質になります。
転移対象としての犬
なぜかというと、心理療法に介在するセラピー犬は、転移対象としての役割を担うからです。人は他者に対応する際に、これまでに得てきた対人関係のサンプルの中から応用可能な関係性を用いて対応します。それは、対人スキルという方法論的なレベルだけではなく、他者の自我状態についても同様に類推するようにして描き出し、それに基づいて働きかけを行います。その対人関係のサンプルは、それまでに出会ってきた人のみではなく、時には自分自身であることさえあり得ます。つまり、人は他者と向かい合った際に、場面に応じて、その他者に何らかの自我を転移させることによってコミュニケーションを進めているということになります。
介在動物は、その転移に適した対象となります。言語をもたず、身体的な反応によって人間の働きかけにフィードバックする動物は、向かい合う人間の状態を反映して、さまざまな人格を映し出す対象となります。中でも、犬や馬はコンパニオンアニマルとして長い間人間と生活を共にしてきた動物であり、感情や快不快の読み取りも比較的わかりやすいため、転移対象となりやすい動物と言えると思います。
人間と介在動物とのコミュニケーション
それだけでなく、人間と介在動物との間のコミュニケーションには、特別な仕組みがあります。それは、人間が介在動物とコミュニケーションをとる際に、自己内対話を行なっているということです。
例えば、
人:ウィル、お散歩行きたい?
犬:・・・。口の周りをペロペロ
人:オッケー。じゃあすぐ用意するからね。
このようなやりとりは、犬を飼っていれば日常的にあるコミュニケーションです。この犬は、口の周りをペロペロする行動をいつもYESのサインとして用いているのかも知れません。その信憑性については飼い主が最も良く理解しているのだと思います。
このコミュニケーションは、第三者から見れば、言語を使う人間と使わない犬とがそれぞれのサインをうまく使ってコミュニケーションを成立させていると捉えられます。では、この時、この人の中ではどのような思考が進んでいたのでしょう。
人:ウィル、お散歩行きたい?(そろそろお散歩に行きたがっているかもしれないな)
犬:・・・。口の周りをペロペロ(「うん、行きたい!」って言ってるんだろう)
人:オッケー。じゃあすぐ用意するからね。(散歩に行ったらきっと喜ぶだろうな)
例えば、上記のような思考が進んでいたかも知れません。
つまり、人は、自己内でコミュニケーションをとっていたことになります。いわゆる自己内対話をしていたと言えます。
実は、このような自己内対話を促進し得る対象というのは多くはありません。その対象が動物ではなく人形であるという人もいらっしゃいます。人形も同じような役割を果たすことができるのですが、動物との決定的な違いは、人形は快不快を示さないことです。
動物だけがもつセラピー効果
ですから、動物だけがもつ固有のセラピー効果は何か?と聞かれたら、自己内対話を極めて容易に生み出すことができる唯一の対象であることと答えられると考えます。
では、そのユニークな働きをより効果的に発現させていくにはどのような資質が必要になるのでしょうか。
例えば、名前を呼べばやってくる、あるいは、顔を向けるというのは、自己内対話によるコミュニケーションを成立させるための大切な初歩的な資質となります。
また、快あるいは不快となる刺激に対して適切に反応できることも大切な資質です。そのフィードバックがあって初めて自己内対話が成立するからです。
そのような資質をもったセラピー犬を目指して、みらいびらきLabo.の専属犬もトレーニングを行っています。
セラピー犬を心理療法に介在させるためにトレーニングされている方がいらっしゃいましたら、ぜひ情報交換していきましょう。
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