Tags:

『動物と子どもの関係学』ゲイル・F・メルスン著、2007、ビイングネットプレスという本があります。この本は、家庭の中におけるペットの機能について考察をし、子どもの心の発達の中において動物がどのような働きをしているのかについて学術的な考察を行った希少な本です。

メイスン氏は、家族療法(家族システム論)的な見方で「家族ドラマにおけるペット」という視点を提案しています。この考え方では、家族をシステムとみなし、その中にさらに親子、兄弟などの影響し合いながら均衡を構築するサブシステムがあるという見方をします。

では、ペットが家族に対して何らかの影響を与える動物同居家族にとって、ペットはシステムの中でどのような機能を有しているのでしょうか。メルスン氏は、これまでの研究に対して、「家族システム論者は、少数の例外を除き、ペットが家族のメンバーであり、概してこれらの複雑な家族システムの一部をなしていることをとらえそこねている」としています。

さらに、「家族システムが、家族メンバー相互をつなぐ感情的な流れの濃密な回路であることを考えると、ペットは循環網の合流点を務めることができ、またしばしば実際にそうしている」と捉え、イヌ、ネコ、トリ、ウマは、人間の感情の「よく調整されたパロメーター」であり、「すぐに感情の気配が影響したり、それに反応したりする」ものであると考えています。

また、「飼い主の食欲不振や抑うつ、その他の病状が、ペットの臨床症状に影響を与えることさえある。その上、「ペットの中に『ペット自らが主導した意図的な戦略を読む』という方向に話を持っていく飼い主さえいることから、家族ドラマのなかにペットを配役する人間の傾向がわかる」としています。

この「ペット自らが主導した意図的な戦略を読む」ということは、心理臨床的には、まさに動物を転移対象としている状態が想起されます。「ペット自らが主導した意図的な戦略」というものを、ペットは言語表現したり、明示したりすることは実際にはありません。それを「読む」というのは、動物のごく小さな動きをヒントに、飼い主が自己内対話することによって「読む」のだと考えられるのではないでしょうか。

メルスン氏によると、「早くも3歳になって、ひとたび十分に話せるようになると、人間は他の種から自分たちを分けている『言葉の壁』を超えてペットを引き寄せる。」「幼児たちは自分の動物たちを、対話を用いた完全なパートナーとする。その結果、子どもは動物の通訳者となり、人間ではないパートナーが意図していることの代理を果たす」ことを示す研究が提出されているとのことです。

このことは、ペットが大人だけではなく、幼児に対しても、他者の意思の推察と自己内対話を促進させることを示していると考えられます。対話せざる者と対話する時に、どのような思考プロセスが行われているのか検証することは、これからの動物介在療法の効果的施術のために重要な課題となるのではないかと考えます。

とりわけ、コミュニケーションについての課題がある子どもや自閉症スペクトラムの子どもに対しては、非常に有効なリハビリテーションの機会を与えてくれることにつながっていくと考えています。

ですが、このことについては、日本においても海外においても研究が少なく、数万年の間、共に過ごしてきたコンパニオンアニマルが、家族システムの中で果たす役割・機能について、それこそ数万年間、研究が保留されている領域です。

私たち、みらいびらきLabo.は、この役割・機能を説明するために、動物への心理的転移という切り口が有効になると考えています。動物介在療法の実践の中で、この説明がエビデンスによってできるように、取り組んでいきたいと考えています。

また、メイスン氏による本著には、動物介在療法について考える際に有効となるパースペクティブがたくさんありますので、少しずつ紹介していきたいと思います。

No responses yet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です