Menu
0 Comments

how to 不登校 vol.9 不登校が家族を維持している?

 

家族療法・家族心理学の基本的な考え方となる「家族ホメオスタシス」をもとに、不登校について考えてみましょう。(保護者向け記事)

 

「家族ホメオスタシス」とは

近年、不登校やひきこもり、依存症などについて考える際に「家族療法」や「家族心理学」の考え方が有効と考えられるようになってきました。

それは、家族の内部で生じている事象に対して、個へのアプローチだけでは十分に問題状況を把握した上で適切な支援を考えることができないと考えられるようになってきたからです。

例えば、不登校の子本人に対して、いくら手厚い支援を行ったとしても、その支援を共有して支持する保護者の存在は欠かせませんし、もしかすると、そのご兄弟がキーパーソンとなっていることがあるかもしれません。逆に、いくら保護者に働きかけたとしても、不登校の子本人にとっては、むしろ、「大人が集まって自分をどうにかしようとしている」と否定的に捉えるかも知れません。

そんなふうにならないよう、家族療法では、家族を一つのシステムとして捉え、それぞれの家族メンバーがそのシステムの中でどんなはたらきをしているのかに注目します。(システムズアプローチ)

家族メンバーの行うある事象や状態が維持されているのであれば、それは、家族システムの状態を維持することに役立っているはずです。家族システムの状態維持に役立っていないのであれば、その事象や状態は維持されずに、他の事象や状態に取って代わられるはずです。

つまり、社会的価値感から見て、良くない事象や状態であったとしても、それが維持されているのであれば、システムの状態維持のためには何らかの貢献をしていると考えられるのです。

このように家族システムの状態維持を得ようとするはたらきを「家族ホメオスタシス」と呼びます。

 

不登校という状態のはたらきは?

では、お子さんの不登校という状態は、ご家族の中でどのような「はたらき」をしているのでしょうか。

家族の中で不登校のお子さんが貢献している「家族ホメオスタシス」を検討するには、お子さんが選択・持続している不登校の「はたらき」に目を向けることが必要です。

私たちは、どうしても不登校になった心理的な理由や環境的な要因に目を向けてしまいがちですが、不登校が持続されているということのメカニズムを知るためには、不登校であることがどうはたらいているのかを検証する必要があります。

その際には、お子さんの選択した不登校という事象が、ある一つの要因によって導かれ、結果として、ある一つのはたらきを機能させていると考えるのではなく、スパイラル的に原因と結果が循環しているものと考えます。

例えば、次のようなスパイラルがあります。

学校で孤独感がある

不登校を維持する

母からの関心を得る

いつも母に批判的な父の批判対象が自分に向かう

不登校であることが母親を守ることになる

親の夫婦間トラブルを回避する

家族の安定維持する

不登校を持続する

母からの関心を得る

・・・

 

このスパイラルで考えたとき、このお子さんの不登校が家族システムの中でいくつかのはたらきをしていることがわかります。

本人の孤独感の解消、母からの関心など、本人にとってのメリットと同時に、父親から母親への批判が自分へと向くことによる親の夫婦関係の維持と家族の安定維持が図られています。

この事例のように、家族内で持続する事象や状態には、機能しているはたらきがあるはずであり、もしその事象や状態を変化させたい場合にはそのはたらきを代わりに機能させる事象や状態をつくり出すか、あるいは、そのはたらきが必要のない家族の状態をつくり出すかのどちらかが必要であるということになります。

 

不登校のはたらきを探る

(1)三角図を描く

では、お子さんの維持された不登校状態に、どんなはたらきがあるのかを探るにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは、家族メンバーの三角図を描いてみましょう。家族メンバーから3人を取り出し、三角形の頂点に置きます。ABCDの4人家族であれば、A-B-C、A-B-D、A-C-D、B-C-Dの4つの三角図が描けることになります。三角図で描くのは、家族メンバー間の関係性が常に3者間のダイナミクスで調整されているからです。

それぞれのメンバーを結ぶ線(辺)を、親和的な関係であれば二重線「=」で、そうでなければ単線「ー」で、希薄な関係であれば点線「- – -」で、断絶的な関係であれば「ー\\ー」で結んでみましょう。

それぞれの三角図に、家族メンバー同士のはたらきかけについて、特記すべきことを書き入れましょう。

この三角図を描くだけでも、維持されている事象や状況が、どんなはたらきをしているのかを推測するのに役立つはずです。はたらきを推測するためにまずは三角図を描くことが非常に有効となります。

 

(2)親の与えてきた禁止令を探る

次に、不登校の状態を維持しているお子さんに、幼少期から親としてどのような禁止令を与えてきたかを思い起こしてみましょう。

禁止令とは、お子さんが小さなときから常にお子さんに言語的・非言語的に与え続けてきた親からの「~するな」メッセージのことです。

禁止令は、口から発した言葉とは裏腹な場合もあります。例えば、お子さんの友達が遊びに来た時に、口先では「また遊びに来てね。」と言いつつ、お子さんには暗に「平日に来られては迷惑だ。友達と遊ぶな。」というメッセージを送っている場合などが例として挙げられます。そのメッセージの根本には、「信用するな。」という禁止令があるのかもしれません。

主な禁止令には、以下のようなものがあります。

①存在するな
②男(女)であるな
③子どもであるな
④成長するな
⑤成功するな
⑥何もするな
⑦重要であるな
⑧仲間入りをするな(属するな)
⑨近づくな(信用するな)
⑩健康であるな
⑪自然な感情を出すな

それぞれの禁止令は、かなり直接的な表現なので認めづらいものであると思います。ですが、例えば、②成長するなについては、子どもが成長し、男性的・女性的になっていくことに対する否定的な気持ちを禁止令として「大人になんてならないで、ずっと私のかわいい○○ちゃんでいてね。」などのメッセージを送っているかもしれません。

また、病気がちなお子さんに対して「いつまでも私が面倒を見てあげるから安心してベットで寝ていて良いんだよ。」というメッセージによって、⑩健康であるなの禁止令を表現しているのかもしれません。

泣くと「うるさい!」、笑うと「何がおかしい!」などというメッセージは、⑪自然な感情を出すなという禁止令として発せられている可能性があります。

このように自分の倫理的・理性的な部分を少し批判的に見つめ直して、親としてお子さんに発してきた禁止令を読み解いてみてください。すると、きっとお子さんをより深く理解するための新たな視座が得られるでしょう。

 

(3)人生脚本を探る

幼少期に親から与えられたこのような禁止令は、7歳くらいまでにその子の「人生脚本」をつくり上げます。人生脚本とは、繰り返された禁止令によって、無意識のうちに根付いた価値観による行動選択パターンのことです。

この人生脚本に入ってしまうと、禁止令に根差した自己否定的な行動選択を行ってしまいます。そして、それを繰り返すことによって自己否定感を高めていってしまいます。

「人生脚本に入る」ことは、無意識で行われる自己否定的、自己犠牲的な価値体系に取り込まれてしまうことを意味します。他人から見ると、わざわざ自分にとって不利益な選択肢を選んで生きているように見えるでしょう。

この点において、一見すると問題行動と見える不登校という状況を持続しているお子さんが家族ホメオスタシスを維持しているという考えと共通する部分がありますね。

不登校状態にあるお子さんは、人生脚本に入っている可能性がある。そして、家族ホメオスタシスを維持している可能性があるという見方が、不登校を維持しているお子さんの心理を理解する上で大切です。

人生脚本を書き換える

不登校のお子さんの人生脚本を書き換える前に、まず行う必要のあることがあります。それは、親の人生脚本をまず書き換えることです。というのは、親から発せられる禁止令は、親の人生脚本に則っているからです。

親の人生脚本を書き換えるための契機のつくり方についてご紹介します。

(1)あなたが自分のことで変えたいと望むことを決める。心に浮かぶものを、肯定的な言葉で紙に書き出す。

(2)あなたが望む変化があなたにとって可能かどうか調べる。そのために、次のことを問う。「そのことを成し遂げた人が少なくとも一人はこの世界にいるか?」もしいるのなら、それは可能なことに加える。

(3)あなたが望んだ変化が達成されたことを、あなたや他の人はどうやって知るのだろうか?詳しく説明する。

(4)他人や誰かのためでなく、あなたのためのこの変化をあなたはどのくらい望んでいるだろうか?

(5)言葉で表現したあなたの目標は、8歳の子どもに理解されるだろうか?そうでなかったら、書き換えましょう。

(6)その変化はそれを達成するためにどんな対価を必要とするだろうか。その対価を計算に入れても、やはりその変化を望むか?

(7)あなたの契約した目標を達成するのに行う必要があることを、少なくとも5つ書き出す。

ここまでできたら

ここまでできたら、あなたの成しえたことを、お子さんに伝わる形でお子さんと共有しましょう。長々と話す必要はありません。あなたの新たな取組についてお子さんが知るだけで十分です。変化を生み出す同盟関係をお子さんと結ぶことが目的です。それによって、お子さんが家族ホメオスタシスを維持するために行動選択している状態から、お子さんを自由にしていく出発点に立てるはずです。


みらいびらきLabo.では、上記の交流分析・家族心理学に基づいたカウンセリングを承っています。詳しくは、カウンセリングのページをご覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。