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写真セラピーしよう。 

「写真を撮ることは、もっとも積極的な外界との接触である。」

ぼくの尊敬するフォトグラファーの言葉です。 

通常、写真を撮るためにファインダーを覗くとき、撮影者はファインダーに写された景色にどんな価値があるのか価値付けを行います。シャッターを押す価値を何に生み出すのかは、すべて撮影者の価値付け次第です。もし何にも価値が見出せなかったら、撮影者はその画像をさっさと消去してしまうでしょう。でも何かの価値付けを行ったなら、捨てずに撮っておくことになります。 

デジタルカメラの時代になり、撮った写真の取捨選択はより自由になりました。デジタル画像は高いお金を払って現像プリントする必要がないので、自分にとって価値があるかどうかという基準だけで画像の取捨選択が可能になりました。写真はより撮影者のパーソナリティを反映しやすくなったと言えます。 

そして、今はスマホで気軽に写真が撮れる時代です。スマホによるフォトグラフィーは、日々クリエイティブなツールに進化しています。自分の創造性の源はどこにあるのかを探ったり、創造性を発動することによるカタルシス(心の浄化)を図ったりすることが誰にでもできる時代になったと言えます。 

そこで、この記事では、スマホやデジカメを用いたセルフ・アートセラピーの仕方についてお伝えしようと思います。

 

アートセラピーであるための4条件 

写真を撮る行為がアートセラピーとして成立するには、4つの条件があります。その4つの条件を整えることで創作活動がアートセラピーとしての効果を得ることになります。まず、それから確認してみましょう。 

4つの条件とは, 
条件1:2段階で行う創作活動
条件2:無意図から始める 
条件3:第2段階でもテーマは決めない 
条件4:評価・分析しない
 
です。 


条件1:2段階で行う創作活動

初めの条件は、創作活動を2段階で行うことです。

1段階目は「素材の創作」、2段階目は「作品の創作」を行います。

例えば、マガジン・コラージュ法では、1段階目は、雑誌をめくり、そこから気になった写真や見出しなどを切り取るという素材の創作。2段階目は、切り抜いた素材を画用紙上にレイアウトし、貼っていくという作品の創作となります。

この2段階法については音楽療法でも同じことが言えます。音楽療法のグループセッションで考えてみると、楽器を選び好きなリズムを叩くことで音の素材を作るのが1段階目。それにグループのメンバーが音を加えていき、1つのアンサンブル作品を作り出すのが2段階目ということになります。

これらのセラピーのように、アートセラピーは基本的に2段階の創作活動を経て行われます。


条件2:無意図から始める 

2つ目の条件は、意図しない表現からスタートすることです。アートセラピーは、意図しないで描写した素材に意識的な加工やレイアウトなどを加えていくという流れを通常たどります。 

意図せずに描写したものは無意識の働きによるものですから、言葉で表すことのできない感覚を含んでいます。意識によるコントロールを受けていない無意識の表現と言えます。 

この無意識が作り出した素材をもとにして、第2段階で新たな創作物を作り出すことによってアートセラピーは成立します。 


条件3:第2段階でもテーマは決めない 

意図しないで準備した素材をもとにして、第2段階としてコラージュやレイアウト作品を作る際にもテーマは決めません。 

例えば、「夢の世界」とか「あこがれの町」などとテーマをセラピストなどの他者が設定しないようにすることはもちろん、表現者自身もテーマを設定してから創作をしないようにしましょう。 

なぜかというと、テーマを設定しようとするとそこに思考が働いてしまい、論理的・合理的な選択をしてしまうことがあるからです。こうなるとアートセラピーのよさを完全に損なうことになってしまいますので、テーマは決めずに気持ちの赴くままに創作を進めることを自他に促しましょう。 


条件4:評価・分析しない。 

アートセラピーをしていると、よく「作品から何が読み取れますか?」という質問を受けます。樹木画で心理アセスメントを行うバウムテストのようなものは、描かれた作品から表現者の心や発達の状態を読み取ることを目的にもしますが、カタルシス効果(心の浄化)というセラピー効果のために行うアートセラピーでは評価・分析はしません。 

ですから、必要がなければ、表現者同士の作品を鑑賞し合うこともしませんし感想を交流し合う必要もありません。 

ただ、作品について質問することは有効となることもあります。無意図的に素材を作り、意識して第2段階の創作活動を行う過程でどのような心理的体験をしていたのかを本人が振り返ることはカタルシス効果を高める一助となる場合があります。 


この4つの条件に則って、手軽に1人でもできるアートセラピーがあります。それが「写真セラピー」です。デジカメやケータイがあれば,今すぐにでもできる写真セラピーの行い方を紹介したいと思います。

写真セラピーの例

前述の4つの条件を満たしていれば,自ずとアートセラピー効果が生じます。これを写真を撮るという創作活動の中で行うにはどうしたらよいでしょうか。考えてみましょう。

条件1「2段階で行う創作活動」と条件2「無意図から始める」ということからは,1段階目に素材集めをする際に,意図せずに写真素材を収集するようにすることを試みましょう。

例えば,道を歩いて,気になったものを撮り集めます。その際には,テーマを設けたりせずに,ただただ気になったら撮るを繰り返します。その際に,撮った写真データの取捨選択はしないようにします。取捨選択する際に意図が入り込むからです。写真素材を無意図的に撮り集めるのが第1段階ということになります。まちがっても,撮ってきた後に表現者同士で写真の品評会などをしないようにしましょう。

第2段階の創作活動は、意図を持って行います。ただし、条件3「第2段階でもテーマは決めない」に則って、テーマは設定しません。テーマは作品ができあがったときに気づくものであって、そこに自分では気づこうとしなかった自分が発見できることがあるからです。

第2段階の創作活動としては、例えば、1枚の画用紙に複数の写真をレイアウトするとか、20枚の素材写真から5枚を選んで左から右に並べるとか、10枚を選んでBGMとともにパソコンでスライドショーにするとか、何でもありです。

そして、作品ができあがった後には、条件4「評価・分析しない」に従い、他者による評価や相互に評価し合う活動は行いません。基本的には自分の作品を自分で鑑賞します。鑑賞する際には、なぜ「その時の自分」はこの写真を選んだのか、なぜ「その時の自分」はこの順にレイアウトしたのか、「その時の自分」は作品にどのような世界を作り上げようとしていたのかというように,この段階で初めて自分を俯瞰する(客観視する)目で作品と作品づくりの履歴を自ら問います。

作品そのものと創作活動の過程全体には、外界との積極的な接触を試みる果敢な自分自身が投影されているはずです。自分と外界とがどのような接触を行ったのか、真に理解できるのは自分だけということに気づきます。「その時の自分」が愛おしくなるくらいに詳細に創作活動の過程を振り返りましょう。

「それで何が変わるのですか?」

「はい、何も変わりません。」

アートセラピーは、何かを変えることを目的にしません。アートセラピーによって、自分には変わる必要がないほどの価値があることに気付くことはあります。ですが、アートセラピーは、自分の問題点を明らかにして問題解決を行うという考え方からは最も遠いところにあるものです。

アートセラピーによって、仮に表現者が困難な状況に置かれているとしても、それは自身の価値が否定される理由にはならず、自身の価値は常に変わらずにあり続けることを確かめられるでしょう。

ぜひセルフ・セラピーとして、あるいは、仲良しグループのクリエイティブな遊びとして写真セラピーをしてみてください。

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