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how to 学びイノベーション vol.6 イノベーションツールとしてのカメラ

 

写真を撮って、世界と接触する

カメラを構えて、目にしたモノの中から何かをキャッチし、写真に残すという行為は、世界との積極的な接触であると言えます。視認した世界から必要な部分のみを切り出して記録するという方法は、写真の他には動画か絵に残すことしかなく、こういった視覚的な記録というのは、きわめて特殊な認知行為です。

同時に、「写真を撮る」ことによって、自分の認知した世界のパーツをカタログ化し、インデックスに並べることが可能になります。写真にすることで、認知され切り取られた世界のパーツを並べ直し、再編成することができます。例えば、時間軸で並べたり、ジャンルで並べたり、色などの要素で並べたりすることができます。このことは、ぼくたちにとても特殊な認知を可能にしたことになります。写真を並べることによって、ぼくたちは、認知した世界を再編成することができるようになるのです。

デザイン思考と写真を撮ること

「デザイン思考」は、イノベーションのプロセスに必要となる、アイディアの創出による問題解決のための思考です。アイディアの創出と言うと、0から何かを作り出していくものとイメージしがちですが、実際には、「デザイン思考」は「かけ算思考」とも言えるものであって、すでにあるモノ同士の価値や意味や機能をかけ合わせて新しい価値を生み出すという思考法です。

「新しいペン」と「犬」をかけ合わせたとしましょう。それで、犬の形をしたペンを作ったとしたら「かけ算思考」とは言えません。それは、むしろ「たし算思考」と言うべきものです。「かけ算思考」になるには、価値や意味や機能がかけ合わされていなければなりません。「犬」の価値や意味や機能に着目し、それらが「新しいペン」にどのように統合できるのかのアイディアを創出することが必要です。そこに「ひらめき」が求められるのです。

例えば、「犬」は飼い主に従順であるという価値をかけ合わせて、個別の持ち主の指の形状に特化したペンを思い付くことができます。また、「犬」は怪しい人物に吠えるという機能をかけ合わせて、不審者アラーム付きのペンなどのアイディアが思い浮かびます。

つまり、「デザイン思考」は、今すでにあるモノ同士を結合したり再編成したりすることによって新しい価値を生み出すところにキモがあるのです。必要なスキルは、今あるモノに目を向けるスキルであり、頭の中に0から何かを浮かび上がらせるスキルではないのです。

そのように考えたとき、「写真を撮る」という行為は、きわめて「デザイン思考」となじみやすいものであることがうかがえます。前述の通り、「写真を撮る」という行為は、自分の周りにある世界(自分が認知した世界)とのきわめて積極的な接触であると言えます。写真を撮るとき、あなたは今あるモノに目を向け、その認知に集中しているはずです。そして、世界のそのパーツを意味をともなって取り出し、写真にしています。ですから、「写真を撮る」を行ったとき、あなたは、「デザイン思考」に求められる第一段階としての今あるモノへの気づきと意味づけをすでに行っているのです。

写真を撮ることとひらめき

それでは、「デザイン思考」で起こる「かけ算思考」のひらめきは、写真を撮る中でどのように行うことができるのでしょうか。結論としては、写真を撮った後に可能となります。

例えば、町の写真撮影を使ってデザイン思考を体験してみることができます。その町はもちろん実在の町であり、それぞれの人が認知している「なんとか町」そのものです。その町のパーツを撮っていきます。テーマを絞る必要はありません。あなたの感性に訴えてくるモノや情景をただ撮っていくのみです。あなたのデジタルカメラやスマートフォン、あるいは、フィルムには、時系列に写真が蓄積されていくことになります。

この段階では、まだ「デザイン思考」は働いていません。感性にしたがって撮りためていった写真は、あなたの「気づき」の成果ではありますが、「ひらめき」というフィルターを通過していません。「デザイン思考」が働くのはここからです。

あなたが撮りためた町のパーツの写真を並び替えてインデックス(一覧)として鑑賞してみることで、実存の町とは異なる架空の町を構築していくのです。町の名前も自分で命名するのです。「実存の〇〇町」から「空想都市〇〇」を作り出すわけです。

この方法で「デザイン思考」を働かせるときには、インデックスで鑑賞することが必須です。個々の写真の鑑賞では、町の再構成を生み出すことができません。写真によって分断された町のパーツをインデックス表示することによって、新たな町として再構成するという作業が可能になります。

空想都市と実存の町

そして、大事なことは、そうして生み出された「空想都市」もまた、実際には「実存の町」のパーツで組み立てられているということです。つまり、これらの2つの町は、双方向で行き来する世界です。

さらには、あなたが、この「実存の町」を認知する時、実はあなたは町のパーツを認知し、それらを組み立てて「実存の町」を認知しています。つまり、「実存の町」自体、あなたが町のパーツを組み上げて作り上げたイメージ世界であると言えます。

あなたは、普段、無意識に町をイメージ世界として認知しています。「写真を撮る」ことを使って「デザイン思考」を働かせたときには、それを意識的に行っているだけなのです。

と言うことは、町の「写真を撮る」ことを通じて「空想都市」をデザインしたとき、あなたは、いつもの「実存する町」のニューバージョンを作り上げたことになります。つまり、その行為を通じて、町に新たな価値を生み出したことになるのです。町に新たな価値が生み出された時、写真に映っている個々のパーツについても新たな価値を与えることが可能となります。

みらいびらきLabo.では、このような「写真を撮る」ことを通した「デザイン思考」の過程をプログラム化し、「デザイン思考」のレッスンとして提供したいと考えています。

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