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ボードゲームと子どもの心理支援

みらいびらきLabo.が行う心理支援の場では、ボードゲームがよく登場します。楽しい時間をもつことが難しい状況にあるお子さんや若者に、単純に楽しい時間を提供することを目的に登場することもあれば、心理療法としての遊戯療法の中で活用することもあります。

実は、長年、ボードゲームやカードゲームは心理療法としての遊戯療法のアイテムとしてはタブー視されていました。その主な理由は、ボードゲームに夢中になることを「中毒性がある」というふうに一部の心理学者や精神科医が捉えていたからでした。賭けポーカーや賭け麻雀、パチンコ等のギャンブル依存症への接近可能性が指摘されていたためです。

そのようなボードゲーム観は、残念なことに、心理臨床家の中で長く持たれ続けていました。その背景には、子どもにとって遊びの果たす機能について、実際よりも低く見積もる傾向があったのかも知れません。ですが、子どもにとっての遊びの機能が見直されるようになるに従い、ボードゲームに対する心理臨床家の評価も変わってきました。それとともに、ボードゲームを愛好することとギャンブル依存症との因果関係についての誤信念も訂正されていくことになりました。

むしろ、心理臨床において、ボードゲームという安全な場において、定められたルールに従って難易度を変えながら問題解決していくプロセスが、認知行動療法などのプロセスと多く共通しており、心理的安全性を確保した上で行うことのできる心理的体験として注目されるようになったのです。


第2のボードゲーム時代

今、ボードゲームが世界的に流行し始めています。ボードゲームというと「人生ゲーム」や「モノポリー」、カードゲームというと「UNO」や「トランプ」を思い浮かべる方も多いかと思いますが、今、流行しているボードゲームは、さまざまな知能を統合的に用い、そこにストーリー性を併せ持つ、これまでとはまったく異なる遊びに進化しています。

この動きは、ドイツから生まれました。ドイツでそのような文化が誕生したのにはさまざまな要因があると思いますが、その一つに挙げられるのがSDGsの流れに伴う「脱電気化」への取組です。日本で全小中学性にPCが配られていたころ、ドイツでは子どもを取り巻く環境の脱電気化が推奨されていました。子どもの遊びについても脱電気化が推進され、ドイツの子どもたちは、ゲームをデジタルディバイスから徐々にアナログゲームへと切り替えていきました。

今、世界的な流行となっているボードゲームは、古典的なボードゲームへの回帰ではなく、最先端の遊びカルチャーであり、子どもが特性としてもっている関心や能力からデザインされたもので、子どもの遊びを知的な活動へと導くことのできる、子どもベースの遊びなのです。

かつて心理療法ではボードゲームはタブー視されていましたが、今や、ボードゲームやカードゲームは、適切なものを選び、楽しむことによって、それぞれの子どもがもっている能力を発動させ、自己有用感を得たり、セルフエスティームを感じたりすることのできるアイテムとして、とても価値のあるものであると考えられるようになりました。


子どもの特性とボードゲーム

子どものもつ特性に合わせてボードゲームを選択することはとても大切です。例えば、子どもの知能特性を評価するためにWISC-IV知能検査が一般的に採用されていますが、このWISC-IVの知能検査の結果から、子どもの特性に合ったボードゲームを選定することができます。

WISC-IVの検査結果は、知能のバランスを可視化して学習に対する支援方法を推定するために用いられることが多いのですが、本来、心理検査は心の健全さを高めるための資料を得るために行われるものです。子どもにとって重要な価値をもつ遊びの質を高めるために使われることがほとんどないのは、とてももったいないことです。

WISC-IVの結果として得られる4つの指標からは、次のような遊びの適性が査定されます。

言語理解指標が高い子には、言語による推測や判断を伴うゲームが合っていて、それを行うことで言語特性をさらに向上させたり、セルフエスティームを高めたりすることができます。また、効果特性が記されたカードを活用してゲームを有利に進めていくことを面白く感じる傾向があります。逆に、言語理解指標が低い子には、そのようなゲームは負荷となり、我慢するようなものとなります。

知覚推理指標が高い子には、パズルを敷き詰めるタイプであったり、マッピングするようなタイプのゲームが適性があります。低い子に対しては、高度な空間認識を必要としないボードゲームから与えてあげることが望ましいです。

ワーキングメモリー指標が高い子には、神経衰弱ゲーム的な要素が入っているものや、記憶保持を競うゲームが有効です。低い子に対しては、それらはおもしろさを感じる要素はなく、興味を喚起させることは難しいものとなります。

処理速度指標が高い子には、早出し系のカードゲームが向いていることが多いです。しかし、単純にスピード感が得られれば楽しめるというわけでもありません。処理速度は、単純な思考の速度を意味するのではなく、それぞれの知能をすばやく統合する力も表しているため、複数プロセスの思考処理を必要とするカードゲームに適性をもつことが多くあります。

このWISC-IV知能検査によるボードゲームの適性判断はほんの一例ですが、お子さんがどんな思考特性をもっているのかをもとにして遊びを選ぶことで、お子さんの能力を伸長したり、セルフエスティームを高めたり、苦手を克服する機会を生み出すことができるのです。


ボードゲームを通じてお子さんの特性について理解し、育むことに関心のある方は、ぜひご相談ください。公認心理師が50種類以上のボードゲームやその他の遊びを通じて、お子さんのセルフエスティームを向上させるお手伝いをさせていただきます。

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