Menu
0 Comments

もったいないWISC-IV活用法

現在、教育機関や医療機関で子どもの知能面の発達課題を知る際に、最も一般的に用いられている検査がWISC-IV(ウィスク・フォース)です。とても多くの子どもたちがこの検査を実施していますが、その結果はどのように用いられているでしょうか。

大人のための検査?

残念なことに、WISC-IVが、大人が子どもの進路や在籍を決定するための資料としてのみ用いられていることが多々あります。特別支援学級や特別支援学校に籍替えをするかどうかを判定するための資料として用いられるケースなどです。時には、本人に検査結果が開示されないまま、周囲の大人だけで共有されることさえあります。

心理検査は、本人の困り感を評価し、改善していくためにあるものです。にもかかわらず、大人が何かを決断するための資料としてだけ用いられていては、検査をする価値が大きく損なわれてしまいます。

ところで、WISC-IVなどの検査結果について、一番よく理解している人物は誰でしょうか。それは、間違いなく、検査を受けた本人です。本人だけが、検査を受けている間に感じた困難や成就感、心地よさなどを知っているのです。検査結果を見ている大人たちは、それを数値によって概観することができるだけです。他方で、本人は実際に検査中に実感を得ているため、検査結果を見て、「ああ、あの時の感覚がこの数値になっているんだな」と納得することのできる唯一人の人物なのです。

本人が検査時に得た感覚と検査結果として現れた数値の整合性や不整合性を認識することによって、知能面での強みや課題が明らかになります。WISC−IVによって他者が理解できることは、知能の各指標の高低やバランスの具合にすぎないのです。

ですから、WISC-IVが最も力を発揮するのは、検査結果をもとに本人とその解釈を行うプロセスにあります。この時に、本人による自己理解と周りの大人による他者理解がなされるのであって、また、同時にその共有がなされるのです。


学習のための検査なの?

前述のような在籍判定のための資料としてだけではなく、学校での授業においてどのような支援策が適切であるかを検討するための基礎資料としてWISC-IVが用いられることも多くあります。

この活用の仕方は、前述の活用方法に比べると、ずっと本人にとってはメリットの大きな使い方となります。しかしながら、時には本人にとって大きな負担感を伴うことにもなり得ることに留意しなければなりません。というのは、本人が知能面での課題とは異なる要因によって授業適応や集団適応が難しくなっている場合、学習環境の適正化が、いわば的はずれな適正化となってしまい、本人をより追い詰めてしまうことがあり得るからです。実際、学習環境の適正化を図る際に、WISC-IVのみが基礎資料として用いられるケースは多く、包括的なアセスメントが行われることは多くありません。WISC-IVでは、視覚的な情報処理に適正があるから視覚情報による支援を多くすることによって学習がしやすくなるというような、直線的な支援にだけ結びつきやすいのが現状です。

学習環境の適正化を行うには、より包括的なアセスメントが必要であり、WISC-IVのような知能検査のほか、必要に応じてパーソナリティや心的エネルギー、こころの健康度などについての検査を行った上で、検討する必要があります。

さらに考えるべきは、WISC-IVは、授業を受けやすくするための検査なのかということです。子どもの困難は、授業での学習場面だけにあるのではありません。授業を上手に受けられるようになってほしいのは、むしろ教師や保護者の願いであることが多く、本人の本当の困り感がそこにあるとは限りません。にもかかわらず、WISC-IVの結果の活用は、授業での学習への適応のために用いられることがほとんどです。

子どもにとって、改善の願いは何を対象としているのでしょうか。それは、上手に遊べるようになることだとみらいびらきLabo.では考えています。昔から「子どもは遊ぶことが仕事」と言われてきましたが、実際の子どもたちの現実はまるで違っています。子どもの仕事は、学校で勉強することにいつの間にか置き換わりました。子どもが望んでも望まなくても、それが改善のゴールとなっており、学校で勉強をすることができるように、心理検査や心理支援が用いられているのが多くのケースです。


WISC-IVと遊び

みらいびらきLabo.では、子どもの暮らしと学びの最適化を最優先に考えています。それを実現する上で、最も重要な要素が遊びの質を向上させることであると考えています。

子どもにとって遊びとは、心理的な安全性を保障された問題解決シミュレーションです。遊びという安全性が確保された特殊な場において、様々な力を統合して問題解決のスキルを身に付けるのが遊びの場です。

そして、その遊びの内容には、個々に適性があります。言語的な遊びに適性がある子もいれば、イメージを活用した遊びに適性のある子もいます。また、身体的な表現であったり、推察であったり、それぞれに遊びの適性をもっています。

そんな遊びの適性把握にWISC-IVを活用しないのは実にもったいないことです。子どもが遊びを通じて身に付けていく発達課題について、これほど的確に示してくれる検査は他にはありません。それにもかかわらず、WISC-IVが大人の目線から学習支援にだけ活用されている傾向は、見直す必要があります。

WISC-IVの結果から遊びの質的向上に活用できるのが、さまざまな思考操作を統合することのできるボードゲームです。ボードゲームは、何を選ぶかによって活用する思考操作を選択できるところに利点があります。WISC-IVによって得られる情報と統合して包括的なアセスメントを行ったり、安全な空間によって課題を克服したりするのにぴったりなツールです。

みらいびらきLabo.では、WISC-IVによる遊び適性のアセスメントのご相談に応じています。もしWISC-IVを活用した遊びによる心理支援に関心がございましたら、メールにてご相談ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。